iCloudプライベートリレーは、SafariでWebを見るときに元のIPアドレスや閲覧先を結び付けられにくくするiCloud+のプライバシー機能です。ところが2026年8月、セキュリティ研究者からPrivate Relayを迂回してDNS情報や実際のIPアドレスが漏れる経路が報告されました。
「IPアドレスを隠す機能なのに漏れるなら、Private Relayは意味ないのでは?」と思うところですが、今回の問題だけで機能全体を無意味と判断するのも正確ではありません。
この記事では、Appleが本来説明しているPrivate Relayの保護と、今回見つかったWebKit側の迂回経路を分けて考えます。ニュースの経過だけでなく、今Private Relayをどう使えばよいのかまで整理します。
iCloudプライベートリレーは意味ない?先に結論

先に結論をまとめると、Private Relayが全面的に意味を失ったわけではありません。通常のSafariブラウジングでは、Appleが設計した2段階のリレーによって、IPアドレスと閲覧先を単一の主体が結び付けにくくする仕組みが使われます。
一方で、2026年に報告された問題は、一部のWebKit機能が通常のPrivate Relay経路の外側で通信してしまうというものです。その経路を利用すると、Private RelayがオンでもDNS問い合わせや実IPアドレスが外部へ露出する可能性があります。
- 普段のSafari利用:Private Relayの保護がすべて無効になったわけではない
- 高い匿名性が必要な用途:Private Relayだけを唯一の対策として信用しない
- 今回の問題への対応:Appleの修正状況を確認し、OSやSafariを最新状態に保つ
- より広い通信経路を保護したい:信頼できるVPNなど別方式も検討する
つまり、「意味がある/ない」の二択ではなく、Private Relayが守れる範囲と、守りきれない例外を理解して使うのが現実的です。
2026年に見つかったPrivate RelayのIP・DNS漏れ問題
2026年8月4日、セキュリティ研究者のTalal Haj Bakry氏とTommy Mysk氏は、WebKitにある3つの機能がブラウザのプロキシ設定を迂回するという調査結果を公開しました。研究者によると、この挙動はiOS・macOS上のプロキシ型ブラウザだけでなく、AppleのiCloudプライベートリレーにも影響します。
ポイントは、Private Relayそのものの2段階リレーが途中で破られるというより、WebKitやOSが別経路で発生させる通信が最初からPrivate Relayの経路に入らないケースがあることです。
| 経路 | 漏れる可能性がある情報 | 研究者が示したiOS側の導入時期 |
|---|---|---|
| DNS Prefetching | DNS問い合わせ経路 | iOS 26.0 |
| WebAuthn Related Origin Requests | 実IPアドレス | iOS 18.0 |
| WebTransport | 実IPアドレス | iOS 26.4 |
DNS PrefetchingはDNS問い合わせが通常経路を外れる
DNS Prefetchingは、Webページがこれから使う可能性のあるホスト名を先に名前解決して、接続を速くするための仕組みです。
研究者によると、WebKitのDNS Prefetchingでは、特定のDNS問い合わせがPrivate Relayを通らず、端末側の通常のDNS経路から送られる場合があります。このケースはDNS漏れであり、後述する2つの実IPアドレス漏れとは区別して考える必要があります。
WebAuthnではパスキーを使わなくても実IPが露出し得る
WebAuthnはパスキーなどで使われるWeb認証の標準です。複数ドメインで認証情報を共有できるか確認する「Related Origin Requests」では、OS側の認証サービスが確認用ファイルへアクセスします。
この確認通信はSafari自身の通常のネットワーク経路ではなく、OS側の認証サービスから直接発生するため、研究者はPrivate Relayを通らず接続先に端末の実IPアドレスが見えると説明しています。
さらに重要なのは、利用者が実際にパスキーを選択したり認証操作をしたりしなくても、この確認リクエストを発生させられる点です。「パスキーを使っていないから関係ない」とは言い切れません。
WebTransportでも直接通信が発生する
WebTransportはHTTP/3やQUICを利用する低遅延通信の仕組みです。研究者の検証では、WebTransportの接続もPrivate Relayが扱う通常のWeb通信経路から外れ、端末から直接接続するため、接続先サーバーに実IPアドレスが見えるケースが確認されています。
研究者はWebTransportについて、iOS 26.4で一般提供された機能として説明しています。
IPアドレスが漏れると何が問題なのか
IPアドレスだけで、すぐに氏名や自宅の正確な住所が判明するわけではありません。ただし、接続元のネットワークやおおまかな地域を判断する材料になり、Webサイト側が持つCookie、ログイン情報、ブラウザ情報などと組み合わせれば、アクセスの関連付けに利用される可能性があります。
Private Relayを利用する人にとって問題なのは、「元のIPアドレスをWebサイト側へ直接見せにくくする」という期待に例外が生じることです。特に匿名性を重視する利用者にとっては、「ほとんどの通信では隠れる」だけでは不足するケースがあります。
一方で、今回の実IP漏れを悪用して現在の閲覧セッションと結び付けるには、Webサイト側が問題の経路を利用する必要があります。Private Relayをオンにしただけで、すべてのWebサイトへ常時実IPが丸見えになるという話ではありません。
それでもPrivate Relayが無意味とは言い切れない理由
AppleはPrivate Relayについて、SafariでWebを見る際に通信を2つのリレーへ分けることで、単一の主体が利用者のIPアドレスと閲覧先の両方を把握しにくくする仕組みだと説明しています。Apple Platform Securityでは、Safari中心の保護に加えてDNS名前解決要求も対象としています。
今回見つかった3つの問題は、その通常経路そのものがすべて機能しなくなるものではなく、通常経路の外側で発生する通信がPrivate Relayを迂回するという問題です。
- 通常のSafari通信まで常に実IPを公開する問題ではない
- Private Relayの2段階リレーという設計自体が消えたわけではない
- ただし「例外なくIPを隠せる」と考えるには問題がある
このため、一般的なWeb閲覧でプライバシーを高める目的では引き続き意味がありますが、実IPが絶対に相手へ伝わらないことを前提にした用途には向かない、という評価が妥当です。
VPNなら今回のIP漏れ問題を避けられる?
今回の3つの迂回経路について、研究者はVPNは同じ問題の影響を受けないと説明しています。VPNはブラウザ内のプロキシ設定ではなく、端末のネットワーク通信をシステムレベルでトンネルするためです。
ただし、これは「VPNなら絶対にIPアドレスが漏れない」「VPNの方が常に安全」という意味ではありません。VPNにも方式、設定、DNSやIPv6の扱い、サービス運営者への信頼など別の確認事項があります。
Private RelayとVPNの役割は異なるため、匿名性をどこまで必要とするか、Safari以外の通信も対象にしたいかで選ぶ必要があります。iPhoneでVPNを使う際の基本的な考え方は、iPhone/iPadでVPN接続する際の注意点も参考にしてください。
Appleは修正する?2026年8月時点の対応状況
2026年8月14日時点で、AppleのPrivate Relay公式サポートページでは従来どおり2つのリレーを使った保護の仕組みが案内されています。今回の3つの問題について、Apple公式サポート上で修正完了を知らせる案内は確認できませんでした。
一方、9to5Macは研究者がAppleへ提出したセキュリティ報告のステータスについて、Appleが問題への対処を予定し、2026年秋の修正が示されていると報じています。これはAppleの一般向けサポートページで公開された修正完了告知ではないため、公開時点では「修正予定」と「修正済み」を分けて考える必要があります。
今後iOS、iPadOS、macOS、Safariの更新で修正される可能性があるため、この記事はアップデート内容を確認しながら更新する必要があります。
IP漏れ問題が集団訴訟を目指す訴えにも発展
今回の研究結果を背景に、2026年8月にはEdward Rickman氏がAppleを提訴しました。Bloomberg Lawによると、原告側はPrivate RelayがIPアドレスや閲覧活動を隠すというAppleの説明について、WebKitの問題により実際には利用者の実IPが見える場合があったと主張しています。
ここで注意したいのは、「Appleが利用者を欺いたことが確定した」という段階ではないことです。現時点では集団訴訟を目指す訴えが起こされ、原告側がAppleの表示やサービス内容について問題を主張している段階です。
Private Relayの技術的な問題と、Appleの説明が法的に虚偽・誤認表示だったかどうかは別の論点です。訴訟の結論が出ていない段階で両者を混同しないようにします。
今Private Relayを使い続けて大丈夫?

一般的なSafari利用であれば、今回の問題だけを理由にPrivate Relayをオフにする必要性は低いと考えます。オフにすると、Private Relayが本来保護している通常のWeb通信についても、元のIPアドレスや閲覧情報を分離する仕組みを利用できなくなるためです。
ただし、「実IPアドレスが相手へ知られないこと」が重要な用途では、修正状況を確認するまではPrivate Relayだけに依存しない方が安全です。
- 普段のSafari閲覧:Private Relayを使い続ける
- 高い匿名性が必要:Private Relayだけを唯一の対策にしない
- より広い通信を保護したい:信頼できるVPNなどシステムレベルの対策を検討する
- 今後の修正:AppleのOS・Safariアップデート内容を確認する
なお、VPNを使えば何でも解決するわけではありません。VPNを選ぶ場合は、運営主体やログの扱い、利用目的に合うかも確認してください。
Private Relayは「意味がない」のではなく限界を知って使う
2026年に報告されたWebKitの問題によって、Private RelayがオンでもDNS問い合わせや実IPアドレスが漏れる経路が存在することが明らかになりました。特にWebAuthnとWebTransportでは、通常のPrivate Relay経路を通らない通信によって実IPアドレスが接続先へ見える可能性があります。
一方、これを理由にPrivate Relay全体を「意味ない」と切り捨てるのも適切ではありません。通常のSafariブラウジングでは2段階リレーによるプライバシー保護があり、今回の問題はその経路を外れる例外が見つかったものです。
Private Relayは便利なプライバシー機能ではあるものの、完全匿名を保証する仕組みではない。今回の問題は、その限界を具体的に示した事例として捉えると分かりやすいと思います。
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よくある質問
- QPrivate Relayは本当にIPアドレスを隠せないのですか?
- A
通常のSafari通信では元のIPアドレスをWebサイトへ直接見せにくくする仕組みが働きます。ただし、2026年に報告されたWebAuthnやWebTransportなど一部の通信は通常経路を迂回し、実IPアドレスが接続先へ見える可能性があります。
- QIP漏れ問題があるならPrivate Relayをオフにした方がいいですか?
- A
一般的なSafari利用では、今回の問題だけを理由に常時オフにする必要性は低いと考えます。Private Relayをオフにすると、本来保護される通常のWeb通信でも2段階リレーを使えなくなります。高い匿名性が必要な用途では、Private Relayだけへ依存しないことが重要です。
- Qパスキーを使っていなければWebAuthnのIP漏れは関係ありませんか?
- A
研究者の検証では、利用者が実際にパスキーを選んだり認証したりしなくても、WebAuthnの確認通信を発生させられるとされています。そのため「パスキーを使わなければ影響しない」とは言い切れません。
- QVPNなら今回のIP漏れ問題は起きませんか?
- A
研究者は、今回報告した3つのWebKitの迂回経路については、システムレベルで通信をトンネルするVPNは影響を受けないと説明しています。ただし、VPNにも別の設定ミスやサービス固有のリスクがあるため、「VPNなら絶対安全」という意味ではありません。



コメント
「26 ios 修正」に関する最新情報です。
Appleが8月17日に「iOS 26.6.1」と「iPadOS 26.6.1」をリリースしました。今回は29件の脆弱性を修正したとのこと。特に、Webブラウザエンジン「WebKit」に関連する問題が多く、悪意のあるコンテンツが原因でSafariが予期せず終了してしまうこともあるそうです。これ、ちょっと怖いですよね…。
新機能は追加されないようですが、セキュリティが強化されるのは安心材料。私たちのデバイスを守るためには、こうしたアップデートをこまめに行うことが大切です。特に、iPhone 11以降やiPhone XS、XS Max、XRを使っている方は、ぜひ確認してみてくださいね。セキュリティの向上は、日常生活の中での安心感にもつながりますから。あなたのデバイスも、常に最新の状態にしておきたいですね!
https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/2608/18/news094.html