学生用の音楽配信サービスを調べていたところ「結局のところ、無料で利用できる音楽アプリが最高なんじゃないか」と思いましたので、いろいろ調べてみます。


結論としては、音楽は無料で聴ける、というのは正解。ただ、なぜ無料なのか、については真剣に考えないと、自分が法律で罰せられる可能性もある、ということは覚えておくと良さそうです。
音楽に関係するアプリって、どんなものがある?

まずは、音楽アプリと言っても色々な種類のものがあります。自分が興味のあるものがどんなアプリなのかを考えてみましょう。
音楽配信アプリ
いわゆる、音楽を配信しているアプリです。最近では定期購読(サブスクリプション)で、月額の支払いで聴き放題というサービスが主流になります。

iTunesなどのデジタル音源の販売をしているサービスもありますが、音楽は個人が所有するものではなく、一定期間の視聴権利を買う、という時代になっていますね。
主な音楽配信サービス
音楽配信サービスのアプリ。月額利用料がかかるのが基本だが、無料でできることもある。無料でできることは「お試し」程度の機能でハイライト再生が主流。
- Apple Music
- LINE MUSIC
- YouTube Music
- AWA
- Amazon Music
- Spotify
- dミュージック

無料期間をうまく利用することで、限りなく永遠に近い長い時間を無料で楽しむことはできます。

サービスの数と、アカウントの数さえあれば、うまく使い回せば無料になるよ、ということですね。
無限無料期間を楽しむ方法
基本的には、1個人が複数アカウントを利用することは利用規約に引っかかります。当然、訴訟に発展して有料以上の出費になる可能性があります。
方法論としては、以下の方法でアカウントを量産することまでは可能です。
- 複数のメールアドレスを用意する
- 複数の端末を用意する
- 複数のクレジットカードを用意する
- 適宜IPアドレスを変更する
- 無料期間終了時に退会する
- (個人情報の削除を要請する)
- 他のサービスを利用する
他のサービスを渡り歩いている間に1年ほど経過します。個人情報保護法では、利用しない個人データに関しては削除することが努力義務とされています。とはいえ、利用規約などで説明した上で本人の同意を得た上で正当に取得した個人情報に関しては、企業が保管できるようになっている、そうです。
個人情報保護法上は、正当に取得された個人情報であれば、ご本人からの要望であったとしても削除依頼に応じる必要ありません。
https://claimnavi.com/column/1817/

サービス利用時に個人情報の取り扱いについては同意していると思うので、実際に個人情報を削除してもらうことは難しいと思います。

架空の住所などで登録し始めたら、もうこの時点で虚偽の事実を伝えているわけで、訴訟では9割負けそうですね。
実際には、よほど悪質なケースではない限り、サービス側が顧客を訴えてくることはないと思いますが、無限に無料期間を楽しむことはできなくはないがリスクの方が圧倒的に大きい、と言えそうです。
リバイバルトライアル
ちなみに、サービスによっては一定期間を開けると無料期間トライアルが復活するケースもあります。一度有料期間などを試して「顧客となりうる」と考えられたアカウントに対して個別に応じるケースもあります。

ひとつ言えることは、無料期間ってのは早めに試してみた方がいいということです。自分に合ったサービスを見つけるためにも、他のサービスと比較する期間も必要なことを考えると「もったいないな」とか考えないで一度は試してみて方がいいです。
音楽を聴くアプリ
いわゆる、プレイヤーとしてのアプリ。自分で所持しているMP3などの音源を再生する。OS由来の音楽プレイヤーはハイレゾなどに対応していないこともあり、高解像度の音楽を再生したりするときにも使う。
また、動画再生サイトなどの音源を抜き出してバックグラウンド再生に対応するようなものもある。大体抜き取られるのはYouTubeで、YouTube側のクリエイターの許可がなければ違法の可能性あり。無料でダウンロードなどは改正著作権法に引っかかり、違法性があるので注意。
OS由来のアプリ
YouTube Music
Androidの環境は少しわからないのですが、デフォルトの音楽プレイヤーはYouTube Musicということで間違い無いでしょうか。こちらも無料で音楽を楽しめるサービスであり、MP3の再生も可能なはずです。
Apple Music
Apple系のデフォルトの音楽プレイヤーはApple Musicです。Windowsで利用する際にはiTunesなど使用するんだと思いますが、私も遠い昔の記憶なので、今はどうしているのかわかりません。
AmazonはAmazon Music
AmazonタブレットなどのOSは、独自の「Fire OS」というものを使ってはいますが、ベースはAndroidです。ただ、独自の機構も用意されており、言い換えると「Amazon アプリストア」を経由して使用するように仕向けられています。音楽に関しても「Amazon Music」がデフォルト仕様になっております。
ハイレゾ対応再生アプリ
デフォルトの音楽プレイヤーが嫌だな、という場合は別個に音楽再生用のアプリなどを準備します。特に、ハイレゾ音源などを再生する場合は、DAC・ポータブルアンプなどを経由することも想定されており、音源を最適化するためにもハイレゾ専用の再生アプリなどを使用する必要があったりします。

Onkyo HF Player
オーディオメーカーのオンキヨーの音楽再生アプリ。
radius Ne Player
目で楽しむハイレゾ。
music.jp
株式会社エムティーアイのアプリ。
音楽を探すアプリ
音楽を見つけるためのアプリ。Shazamしか知らないけども、音楽を探せるアプリを載せておきます。
Shazam
Shazamは、実はアプリになる前からサービスを始めていました。登場した時は、「2580」にダイヤルして音楽を聴かせるとSMSでアーティスト名などを教えてくれる、というサービスだったようです。
2008年にアプリとして登場。2011年にはCD音源だけではなく、テレビ番組、広告、FMなどの媒体から流れてくる音楽に対しても認識するように。2017年にAppleに買収され、Siriの機能としても使用できるように。

Siriに「この曲は何?」と聞くと答えてくれるって、知ってました?
なるべく、音楽を無料で楽しみたい

音楽を無料で楽しみたい、その気持ちは大変に良くわかります。
無料で音楽を聴く基本
まずは、どうやれば無料で音楽を楽しめるのか、その基本について簡単にお話ししておきます。
音楽を販売する上でのポイント
- 著作権と独自性
- 広告
- 体験サービス
音楽はアーティストの創作物です。アーティストと言っても、商業用の音楽であればその音楽を作るために表に立つアーティストだけではなく、様々な人たちが関与しています。商業用の音楽は「売る」ために作っています。これを無料で利用する環境では、誰も音楽を作ろうとはしません。

いや、売るためだけに音楽をやっている人ばかりでは無いと思うけどね。
著作物としての音楽
皆さんは、どのような著作物をお金を出して購入しているでしょうか。実は、著作物のほとんどはやろうと思えば無料で楽しむことができます。絵画、小説や漫画からコンピュータプログラムなど、ほとんどのものが誰かの著作物です。このブログだってそう。

特に、デジタルコンテンツになったものは即座にインターネットに流せるので、すぐに世界中で共有されるし、誰の著作物で、どこがオリジナリティなのかはすぐにわからなくなってしまうね。
著作権の話をすると少しややこしくなるので、今回は商業用の音楽に限った話をします。商業用の音楽でも、たとえばYouTubeなどの動画投稿サイトなどを見れば「最新の楽曲」が提供されており、オンラインに接続すれば誰でも無料で楽しむことができます。
無料で楽しむことができても、著作権が放棄されたわけじゃない
YouTubeなどで音楽が聴けると、もういっそダウンロードして自分で聴けるようにしたくなるところです。ちなみに、YouTubeのダウンロードに関しては利用規約の違反となる可能性がほとんどです。
しかし、技術的には簡単に音楽を複製することができます。DRM処理が施されていたとしても、デジタルコンテンツを物理的に複製した後にさらに複製を繰り返すことだってできます。いわゆる、映画泥棒的な感じで、最新の映画を盗撮して複製するパターン。
無料で音楽が楽しめる理由
商業目的の音楽であっても、無料で楽しむことができる場合があります。音楽には人を集める力があります。ファンを作る力もあります。エンターテイメントとして楽しむこともできます。音楽のちからは無限大です。
- 楽曲販売による収益
- 楽曲が使用されることによる利益(使用料)
- グッズ販売、ライブ・コンサート収益
今は楽曲販売も「アルバム(CD)の売り上げ」ではなく、実質的にはストリーミングサービスからの使用料という形での収益が多くなっていると思います。
使用される場合も、これまでは大手マスメディアの広告タイアップなどが想像しやすかったと思いますが、YouTuberなどの個人配信者のBGMなどとして使用されることでも収益化できます。さらに、自身の楽曲を使用する代わりに自身の楽曲をPR・CMできるような権利を手に入れたりもできます。
個人の倫理観に著作が依存する
基本的にはお金の話です。ただ、「誰が」「いつ」お金を支払うかが曖昧になってきているのが昨今の音楽事情なんだと思います。
「CDの時代」には、ファンが好きなアーティストの音楽を聴くためにCDを買うという取引がされていました。これが基本。ただ、お金がなくても「ラジオ番組」や「テレビ音楽番組」などをみていれば音楽を楽しむことはできました。録音に関しても「個人」で楽しむ分にはとやかく言われなかった。
今は、音楽配信も簡単にできてしまう時代です。音楽を購入することは「聴く権利」を購入することなのか、モノとしての対価のやりとりがなくなって、「CD買ったから友達に貸そう」が飛躍して「音楽を買ったからクラス全員で共有しよう」も簡単に実現されてしまうようになりました。
そうなってくると、もう「個人の倫理観」次第で、著作物が簡単に「誰かのものになってしまう」ということになってしまいます。
対価を知る
この話をまとめ切るのは無理だと判断したので、割愛します。

簡単に言えば、著作者に対して最終的にお金が流れる仕組みになっていればいいけど、その仕組みからはずれることをしたら良く無いよね、という話です。

場合によっては、犯罪にもなるよ、特に違法アプリ、みたいな話で後半に続きます。
無料で音楽を聴く方法
話が長くなるので、要点だけ抜いてサクサク進めます。
アナログ録音する
まず、個人で楽しむ場合は、音源をアナログに録音するという方法があります。配布しない限りは著作権法でもOKなのと、根本的に個人が家でやっていることは誰も知らないよね、という話。
私は新着音楽をラジオで録音する、ということをして過ごした青春があるし、多くのアーティストも「そのくらいなら」と思ってくれるとは思います。著作権は日本では親告罪(著作者が訴えないといけない)でしたが、昨今では非親告罪化する流れもあります。
この非親告罪化とデジタル著作に関しては関連が深いので、各自で学ばれるといいと思います。

SNSなどの機能でメッセージに添付したりする場合でも、「公衆」の判断次第で即刻アウトになる可能性もあるので、本当に慎重に対応しましょう。
無料期間を使い倒す
無料で楽しむ方法のひとつとして、前述の「配信サービスのトライアル」などを活用する方法があります。虚偽の申告などはしないよう。
無料プランを使い倒す
少し似ていますが、音楽配信サービスでは「無料で使える機能」などがあって、これで音楽を楽しむこともできます。多くは「スキップ制限」や「ハイライト再生」など、楽曲の一部分だけを提供したり、配信する音楽を制限したりすることで本来のサービスへの誘導を図っています。

無料期間も無料サービスも、基本的には配信サービス側がアーティストに対して収益を配分しているので、サービス提供側が正規に用意している無料提供分に関しては存分に利用していいことになりますね。

仮に無料でも、広告収益などとして利益につなげていることもあるので、無料でもお金にならない、ということはないんですね。
アーティストとしても、認知されないことには自身の収益につなげることはできないので、配信サービスなどを積極的に活用して売り込みにつなげる、ということもありそうです。
違法アプリについて考える
では、無料サービスでも安心して使えるかと言えばそうでもない。違法アプリと言われる類の音楽配信サービスが横行しています。
違法音楽アプリ(MusicFM、MusicBox)の利用者数は、昨年3月の246万人から9月時点で81万人に減少し、10月以降ではさらに64万人にまで減少した(2020年11月時点)。違法音楽アプリの規制強化を目的とする改正著作権法が施行された10月以降の利用者数は、3月時点利用者の246万人と比べ、約4分の1となった。
悪意を持って利用している人は4割程度
「違法音楽アプリからアーティストにお金が支払われている認識」では、違法音楽アプリがアーティストに還元がないと理解して利用している利用者は、2020年10月以降利用者で39%、2020年9月までの利用者では50%にのぼった。
悪意、と言い切っていいかは分かりませんが、アーティストに還元されていないと知りながら利用している方が4割程度もいます。
違法アプリにはどんなものがある?
ドンない方がアプリがあるか、その傾向を書いておきます。
Music FMとは
元々は中国を中心に出回ったアプリ。権利者に無断で音楽などをアップロードして、利用者はこれをダウンロードして音楽を聴いたりすることができた。漫画村の音楽バージョンみたいな話。
Music Boxとは
2012年にMusic FMの別名としてリリースされたアプリ。以後も名前を変えたり表現を変えたりして同様のアプリが作られている。
最近の傾向
基本構造が「無料で音楽をダウンロード」ということで、言葉を変えて存在し続けている模様です。例えば、「リッピング不要」「自分で買った音楽をダウンロード」などの文言を利用しています。

自分で買った音楽を自分で利用する分には著作権としてはOKとみなされるところだけど、アプリ側で公衆に著作物をアップロード・晒す部分は完全にアウトですよね。
AppStoreから完全追放、されたの?
基本的には、AppStoreもGoogle Play Storeも法に触れたアプリに関しては順次配信を停止しているようです。ただ、後述するように「アプリリリース段階」では違法コンテンツを提供する媒体となるかどうかは判断しづらく(当然、URLを載せるだけでは法に触れるわけではないので)、似たようなアプリが続々と誕生し続ける環境にあることは事実のようです。
改正著作権法について
今回の法改正では、特に悪質なリーチサイト・リーチアプリに絞り込んで規制を導入することになりました。具体的には、侵害コンテンツに殊更に誘導するリーチサイト等または主として侵害コンテンツを利用するために用いられるリーチサイト等を運営・提供する行為と、これらのリーチサイト等に侵害コンテンツのリンク情報を掲載する行為を一定要件の下で違法とし、差止請求・損害賠償請求といった民事措置の対象とする他、刑事罰(親告罪)も手当てされることになります。
https://www.noinfringingapp.jp/detail.html
- 違法コンテンツの配信を行うアプリ・運営に対しての罰則
- 違法コンテンツを提供するリンクへ誘導することも罰則
- 違法音楽アプリの運営、または提供元は5年以下の懲役か500万円以下の罰金
- 違法アップロードされたものへのリンクを違法音楽アプリ上に掲載すると3年以下の懲役、または300万円以下の罰金が科せられる
聴くだけで違法なのか?
アプリをダウンロードする段階ではまずは違法とは言えません。違法にアップロードされた音楽を「ストリーミング形式」で再生することは、ややグレーな感じがしますが、刑罰の対象となることはないようです。
音楽をストリーミングで聞くだけであれば違法にはならず、刑罰の対象にもなりません。
https://wwg.co.jp/blog/10011
ただ、これが、本来有料配信などされている音楽を「違法にアップロードされたもの」だと知りながらダウンロードすると著作権法に触れるようになりました。
なぜ、違法アプリを利用するのか
クソ長い文章になってしまったので、編集なしでテキストだけ置いときます。
経済観念がないのか倫理に乏しいのか
今でも違法アプリは簡単に探すことができます。私はAndroidは利用したことがないので分かりませんが、AppStoreにおいても類似の違法アプリを見つけるのは容易いです。AppStore側で「違法リンク」と認識することは難しいので、NGを出すラインの見極めが難しいのかもしれません。
さて、中学生・高校生が違法アプリを利用するのはお金がないからだと思います。では、この高校生たちが「お金を稼ぐ」ようになったときに、有料アプリや楽曲購入をするようになるかといえば、これには疑問符がつきます。
なんだったら、一定数は「音楽は無料で楽しむものだ」という認識を持ったまま大人になって、そのまま違法アプリを使い続ける方が想像しやすいよね。今まで無料で利用できていたものにお金を出すって、難しいよね。
では、根本的に、なぜ彼ら・彼女らは違法アプリを使用するのか。さまざまな理由が考えられますが、私なりにも理由を挙げてみます。
- 違法であることを知らない
- お金の流れを知らない
- 誰に迷惑をかけているかが想像できない
- 自分さえ良ければいいという価値観
- 自分はお金がないから仕方がない、という価値観
根本的な経済的無知
割合がどれくらいかは分かりませんが、根本的に中学生・高校生は「お金を稼ぐということ」を理解していない可能性があると思います。
世の中には「無料で楽しむことができるもの」もたくさんあります。最近ではゲームもほとんど無料です。動画だって無料。音楽サービスだって、無料で提供しているものはたくさんあります。
この「有料サービス」と「無料サービス」、さらには「違法サービス」の区別がついていないという方は結構いるのかもしれない。
メタ認知が機能しない
違法だと知っていても利用している方もいます。この辺りは倫理観のバグが起きているのだと思いますが、自分を卑下するなり特別視するなりして、違法アプリを利用する自分を正当化する歪んだ認知は存在すると思います。
たとえば、「自分はお金がないから仕方がなく違法アプリを使っている」みたいなこと。もちろん、仕方がなくもなんともないのですが、本人たちは真剣に「お金がない自分だけは違法行為をしてもいい」と信じているわけです。
では、なぜこのような認知が生じているかといえば、根本的なことを言えば、人間は都合のいい情報を率先して集めて、都合の良いように解釈をして、都合のいい行動を取るための準備をします。今回のケースで言えば、「無料で音楽が聴きたい」という目的のために、都合のいい情報を集め(たとえば、みんなが同じことしている、など)都合のいい解釈をし(私はお金がないから仕方がない)、都合のいい行動をとります(本当は違法かもしれないけど、ダウンロードしよう)。
ただ、この行動は人間としてはある種自然な行為です。みんな、自分が少しでも自分が得をするために行動するもの。ただ、みんなが自分勝手に行動すると社会全体で見ると損をするので、法律である程度の行動を規制するわけです。だから、違法アプリを利用することは、「子供だから」「知らないから」ではなく、みんながやる可能性があって、みんながやるかもしれないからこそ平等に取り締まり、「誰もがやらない」環境を作るしかない。
でも、違法アプリを利用しない人もいるよね
これは、自分の行動を客観的に把握できるかどうか、という能力が足りていないことが要因のひとつとして考えられます。違法アプリを利用しない判断ができる人は、メタ認知が多少なり発達しています。メタ認知未満の「周囲の目線を気にする」にとどまっている可能性はありますが、少なくとも「自分の外に認知領域を広げることができる」人ではあります。
難しい話になってしまうので簡潔にしてしまうと、違法アプリを利用する人は「自分の都合=自分の範囲内」から考えを広げることができません。逆に、自分のことだけを気にかけているので、自分の中で合理的と思われる道筋ができれば悪いことも平気でできます。しかし、自分の外側にも認知領域がある人は、自分の行動の結果を相手がどう判断するか、ということまで気にかけることができます。
メタ認知が発達すると、「自分の考え」と「自分じゃない人の考え」の両方を判断することで自分の行動などを決定することができるようになります。一方でメタ認知未満にとどまる場合は、「自分じゃない人の考え」を気にすることはできますが、「自分の考え」が犠牲になるケースもあります。自分が我慢すればいい、はメタ認知としてはまだ未熟です。自分も、相手も、周囲の人も、全てを総合的に判断して客観的に結論を導くことができることがメタ認知の発達だと考えられます。
さらに、人間の判断基準は「過去」が起点になりがちですが、自分や相手の行動の結果、つまり「未来」も含めて認知領域を広げることができることが一番の理想で、ここまでできる人は人を率いることができるような人になる素質があります。
話を戻すと、違法アプリを利用しない人は、「違法アプリを利用することで、どういう影響があるのか」を、自分本位ではなく考えられる人、ということです。もちろん、アーティストに収益がいかないということもそうですし、「自分が違法アプリを使うような人間だと周囲が評価することが損か得か」というところにも考えが及ぶ、というわけです。
悪いことできる人って、たとえば「アーティストが泣く」という事実を認知しても、それをリアリティのある情報だと判断できないというか、言葉以上の肉付けがうまくいかないんだよね。だから、「自分の好きな音楽が聴けなくなる」という未来の自分の損益も思いつかない。ただ、この手の人は「未来がコントロールできるもの」でもないから、現在の利益だけを求めるしかそもそも選択肢がないとも言えるんだけどね。
勉強しなくちゃいけないと分かっていても、未来の自分への共感性もないから、現在の自分の「勉強する」という行動まで持っていけなかったりするよね。
色々と書きましたが、違法アプリを利用してしまう人は一定数いるし、今後も減らないということだけは確かです。だから法律で取り締まるしかない。道徳に訴えかけても行動が変容する人は一部だけ、というわけです。
道徳は教育できない
ちなみに、一定数は必ず存在する「メタ認知の欠如」が見られる人。メタ認知自体は経験値を積んでいくことで擬似的なメタ認知を獲得していくことは可能です。この「擬似的なメタ認知」は、実際のところ「道徳」が補っていると考えられます。
ほとんどの人は「自分で判断して周囲の人が幸せになる行動」を取ることは難しい。だから、「とりあえずこういう行動をしておけば大多数の人は喜ぶ」という目安のようなものを用意しておくことにします。これが、行動のお手本であり、つまり「道徳」です。
面倒なことを言いましたが、「喧嘩はしない」「ありがとうをいう」「席を譲る」などのことです。世の中に起こりうる例題に対しての「大多数にとっての答え」を用意していくのが道徳。これを答えとしておけば、とりあえずみんなが喜ぶとか、そういうもの。
ただ、本来、この「答え」は「回答例のひとつ」に過ぎず、実際の生活の中では「あなたの行動を正しい」と判断するのは「周囲にいる人」であり「自分」も含まれます。
道徳というのは「周囲の人」との共通言語のようなもので、仮にメタ認知能力が発達していなくても「社会一般的な正解」として通用するような振る舞いを示していたりします。
話を戻すと、「違法アプリを使う」ことは根本的に違法ですが、違法だと知らなくても「悪いことなんじゃないか」と思い至れば使用することをやめようとする力学が働きます。自分の中で正解が導き出せなくても、「道徳」が答えを教えてくれることは往々にしてあるのです。
SST的なトレーニングが必要なケースも
実際には、道徳は「模範解答」のようなもので、実際のシーンにはそぐわないケースもあります。簡単に言えば「赤信号、みんなで渡れば怖くない」ような時で、「よし、これからみんなで赤信号を渡ろうぜ」というときには、道徳的にNGでも「周囲の人」たち全員が利益となることであればそれが正しい、という場面もあります。
このときにも「いや、赤信号だから渡れないでしょ」という反応を示すとASD的だと言われます。アスペルガーですね。個人的には、このシーンで正しいのはASDの方で、周囲の空気を読んでも悪いことは悪いと言える社会の方が正しいとは思います。みんなで渡っても赤信号ですし、赤信号で渡っちゃいけないのは、「本当に危ないときにも赤信号で渡る習慣」が危険ですからね。
違法アプリに話を戻すと、友達との関係性で考えると「違法アプリをみんなで内緒で使用すれば、みんな無料で音楽が楽しめるからいいよね」は、この集団の中においては正解だと言えます。ただ、これは先程のメタ認知の話でいえば、「個々の利益の集合体」になっている「自分たち本意の集団」における正解であって、社会的にはやはりNGです。
さらに言えば、「自分たちの利益を守る」という同調圧力でお互いを縛り付けている関係性とも言えますので、実際のところ集団の利益になっているかどうかも怪しいところ。悪いことをお互いに押し付けあう関係性、という方がわかりやすいかと。決して、居心地の良いものではなかったりします。
道徳の話もしましたが、道徳では「固定されたシチュエーション」での模範解答の勉強はできます。ただ、実は社会全体でこの道徳に感覚が追いついていない、あるいは道徳が社会と乖離し始めている部分もあって、子供が道徳を学んで「模範解答」を実演しても、親の振る舞いが道徳に反するものだったりして、結局、子供の中に定着しない、みたいなこともあると思います。
親が道徳の足を引っ張っているシーンは結構あるよね。親が、赤信号を渡ることを仕込んでいると言い換えられる。親としては「赤信号を渡らなきゃいけない時もある」という言い訳もあるんだけどね。本当は、赤信号を渡らなければいけない時をなくす方法を考えることの方が大事なんだけどね。

さて、道徳には限界がある、というのは実際、違法アプリが法で規制されても246万人が違法アプリを利用しているという統計が出ています。この数字を見て憤ってくれる方が増えればいいのですが、むしろ「あーまだ仲間がいっぱいいるわ、安心したわ」という方もいるんじゃないかと。

「自分の利益(あとディベロッパーの広告収益)にしかならない」と分かった上でも使い続ける人が6割を超えているというのは、反応としては当然のことで、先ほども申し上げた通りこの人とたちにとってはすでに「音楽は無料で聞くもの」という価値観が根を張っています。おそらく、お金を使って音楽を聴くというように価値観を変えることは、価値観を立ち上げるよりずっと大変な工程が必要になります。
本気でこの人たちの行動を変えるのであれば、やはり「仕組み」からいじる必要があります。
違法アプリを利用する人を根絶させる仕組み案
あくまでも個人的なアイデアです。なんの法的根拠もありません。妄想です。
AppStore・Google Play Storeからのアプローチ
たとえば、無許諾音楽アプリ(違法アプリ)を根本から断つことを考えると、これは意外と難しい。このアプリ自体は「違法な音楽アップロードができるリンクを紹介する」くらいに止まっている可能性があり、アプリをリリースしないという法的根拠が「アプリリリース時」には乏しい、ということです。
AppStoreはディベロッパーに介入するイメージがあるけど、Google Play Storeは比較的自由なイメージですね。
とはいえ、違法リンクが発覚さえすればアプリ提供をストア側で停止する理由ができるので、報告があればシラミ潰しにやっつけていくことはできます。ただ、結局、いたちごっこになるだけでもあります。
では、どうするべきかといえば、「違法アプリを利用した方が損をする」という仕組みを作ります。法律から多少いじる必要がありますが、「正しいことをした人に還元する」仕組みにしておけば、ヘイトは「悪いことをする人」に向けられるので、この点の理解が深まる仕組みである必要があります。
わかりやすく言えば、(違法)ダウンロードをした時点でOS側に記録が残るようにし、これは自動でユーザーの利用履歴としてAppleやGoogle側に情報を蓄積します。この情報を収集することに関してはスマホを利用する段階で許諾を取り付けます。
アーティストやクリエイター側は、違法アプリなどを確認した段階でストア側に賠償請求することができるようにします。窓口がストアになります。こうなるとストア側は「違法アプリを出さない」圧力がかかり、これは他のディベロッパーの規制にもつながるので、ストア側は「違法アプリ」を出したディベロッパーと、違法ダウンロードしたユーザーに請求ができる仕組みを作ります。
つまり、早い話が「違法ダウンロード」の根拠はユーザーの履歴を辿ってわかるようにして、違法ダンロードした分だけはアーティストに相応の対価を本人たちから支払ってもらう、という仕組みにするというわけです。
ただ、この仕組みにすると、今度はOSからの脱獄などが加速する可能性があるけどね。つまり「ダウンロード履歴」がわからないようにユーザー側が小細工を始める、ということ。
ダウンロード履歴をオンラインで情報回収すると、少なからず通信量が増えてユーザーの負担も増えるしね。
この、「意図的に法を脱して得しようとする」人、言い換えると悪意ある人間たちに対しては別途対策が必要だけど、「無意識の犯罪者」たちは複雑な工程を避ける傾向にあるので、まずはこの仕組みで「違法アプリを悪いと思いながらもついつい使ってしまう」人たちを対象に「利用した方が損をする」というわかりやすい仕組みを作ることが大事だと、私は思っています。
教育からのアプローチ
道徳の話もしましたが、「みんながこうしましょう」的な講義型道徳は、実際のところ「効果が出て欲しい人には響かない」授業になりがち。では、道徳教育が必要な人にも響くような道徳授業とは何なのか。
頭の良さはIQで大まかに指標が出せますが、「自分以外の周囲の人の目線で考えること」であるメタ認知的な知能指数は、知能指数と多少の関連はあれまた別の能力であると考えられます。頭が良ければ共感性が高いわけではないし、むしろ頭がいいからこそ「頭が悪い」人の気持ちからは遠ざかる可能性はある。
まずは違いを認めること
今の学校の先生もほとんどできていないと思いますが、「できないこと」をまずは認めることから始める必要があります。違法アプリの話で言えば、「違法であることを伝える」ことで相手の行動は変容しないということを、伝える側も認識することが大事。
違法であればやめないとな、という行動変容に繋げられる人も一定数います。ただ、一定数は「違法だからこそやる」という独善的な思考(あるいは反社会的な思考)の人もいます。さらに、一定数は「わかっちゃいるけどやめられない」という「行動・価値観を変えることが苦手」な人もいます。つまり、個人個人によってアプローチする方法は変える必要があるということです。
違法アプリだよ、と注意する看板を立てても、違法アプリを使う人は見ないし読まないし理解しないってことだね。道徳を教育する場合、この看板を立てて「みんながルールを守るように」で終わらせないことが大事。まずは、看板はあくまでも「目標の統一化」くらいの役割であり、個々がルールを守るようにするためには別々の施策が必要になる、ということを知ることから始めます。
基礎知識をつける
最初のアプローチとしては、「違法アプリを使用することは犯罪である」と説明することです。当たり前なんですけど、本当に「違法だと知らないで使っている」人はいます。まずはその認識を広め、かつ「周囲の人もみんなこれを知っているんだよ」という状況を作ることも大事です。
メタ認知の話になりますが、「みんな知らない状況」と「みんな知っている状況」では自己抑制効果が異なります。ただ、これはメタ認知が働く人に対してであり、「周囲がみんなやらない」ことで自分を抑制する原動力に変えられる人は全員ではありません。
ただ、たとえば授業の中で「違法アプリは犯罪ですよ」という共通認識を作れば、同じ授業を受けた人同士の中では「あまり大っぴらにやっていいことではないな」ということで同調圧力を作り出すことはできます。「みんなでやれば怖くない」も一枚岩になれることが前提で、集団を大きくすれば異端児や対抗勢力も出てくるので、違法アプリを利用し続ける環境を打破することにはつながります。
議論する
たとえば道徳の授業としてのアプローチとしては、アクティブラーニングとしてグループディスカッションを取り入れることをすることが大事です。今回で言えば、テーマを「違法アプリ」にする。答えとしては「違法アプリを使わない」に決まってはいるんだけど、グループディスカッションで話し合うと、「悪いことだから当然しちゃいけない」と信じて行動できる人もいれば、「でも、目の前に無料で音楽が聴けるアプリがあれば使っちゃうよね」という意見も出てくる。大事なことは、この「人によって捉え方や温度差が違う」ということを認識した上で、それぞれの人が「どうやったら使わないか」を自分たちで考えるという過程にあります。
授業としては、結論を出すことよりも「意見の多様性を生み、必要な枠組みと、個々の利益とのバランスをどうすれば保てるのか」という点にみんなが考えを寄せ合えればそれでいいのだと思います。
今後、学習は「課題解決型」にシフトしていきます。実際に社会で問題となっていることに対して、自分たちで解決方法を導き出す力が求められています。これまでの暗記型学習ではなく、手に入れた知識を活用する方法を、授業で養っていくことが求められます。
一つの解決策としては、私が先ほどあげたような「ストア規制型」や「ユーザー罰則型」みたいなことが考えれれると思うけど、これを考える道中に、「思考過程の偏り」「価値観の個人差」などがあるということを認識することが大事なんですよね。
みんなが取り組むべきこと、個人が対策すべきこと、全てを一律に対処しようとするのではなく、各々が実行力を持って取り組めるにはどうするかを考えたいところです。
フィードバックする
授業ということであれば、一度取り上げた議題に対してみんなが意見を出し合って満足して、それで終わりにしないことも大事です。必ず、もう一度プレイバックして考えや行動の変化があったのかを確認します。会議して満足するのは大人たちにとっても悪いところで、会議で決まった内容が活用されているかどうかの方が大事です。
道徳の授業自体、私はあまり覚えていませんが、覚えていないのはきっと「各自で感想文を書いて終わり」だったからだと思います。半年後にもう一度変化をお互いに報告し合うことで、道徳も知識として定着していくことを狙っていくべきです。
たとえば、違法アプリで言えば「違法アプリについて学んだ、ディベートした」授業の後に、自分の生活を振り返ってみる。無料でも音楽を提供しているサービスがあるけど、その違いは何なのか。有料サービスと無料サービス、実際にどのように違うのか。大人たちはどう認識しているのか。友達の変化は。法律でできることってなんだ、その法律を作るためにはどうしたらいいのか。気づくことは何でもいいんですけど、自分なりの視点で振り返って、授業内容を深める時間というのも大事だと思います。
色々書きましたが、この記事の本質は「音楽アプリってどれがいいの?」ということでした。完全に蛇足側がメインになってしまいましたが、この辺りのことを考えてみる時間ってのは、将来の役に立つのでおすすめです。
問題に自分で気づいて、考えてみて、周囲を巻き込んで、価値観を見直し、行動を変える。これができると、就職活動で他の学生に負けることはないですからね。さらに、自分を変えたことを評価して、それを誰かに伝えるってのはもうそれだけで貴重なスキル。AIが持てない、これからの就職活動で役立ちます。
たとえば、ここまで自分の疑問を深めて「とりあえず書き出せる」だけでも、私のようにブログでご飯食べることにつながりますからね。ブログって、最低、読まれなくても収入に変えることはできるんですよ。不思議ですね。
コメント
「高校生 プログラム 授業」に関する最新情報です。
2025年2月16日、株式会社ユーザベース社で「フェイクニュース時代のメディアリテラシー育成プログラム」の報告会が開催されました。このプログラムでは、高校生が自らメディアリテラシーに関する授業や教材を作成し、発表しました。参加したのは7つの高校から38名の生徒で、11種類の授業案や教材が紹介されました。発表内容には、古文を用いたメディア情報リテラシーの理解を深める授業や、ゲームを通じて楽しく学ぶ教材が含まれていました。生徒たちは、フェイクニュースに惑わされない情報の見極め方や批判的思考力を養うことを目指しています。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000152776.html
「放送 番組 倫理」に関する最新情報です。
2023年に放送された「激録・警察密着24時‼」に関して、放送倫理検証委員会は不適切な内容が含まれていたとして「放送倫理違反があった」とする意見書を発表しました。問題の番組では、警察官が捜査の様子を事後に演じた場面があり、視聴者の信頼を裏切る内容だったと結論づけられました。また、番組は逮捕された人数について誤解を招く表現を使用し、捜査員同士の会話や会議の様子を再現撮影したにもかかわらず、実際の捜査に基づいているかのように構成されていたことも指摘されています。
http://www.asahi.com/articles/AST1K1TN1T1KUCVL019M.html?ref=rss
「多様性 メタ 終了」に関する最新情報です。
米メタ社は、社内の多様性促進プログラム(DEI)を終了することを発表しました。人事担当副社長のジャネル・ゲイル氏は、採用における多様性を考慮する「ダイバーシティ・スレート・アプローチ」や、DEIに特化したチームを廃止する理由として、アメリカの法的および政策的状況の変化を挙げています。特に、DEIが特定のグループを優遇する取り組みと見なされることが増えていると指摘しています。
また、メタ社は今後、トランスジェンダーや同性愛者、女性に対する侮辱的な言葉の使用を「許容する余地が残されている」とし、これに関連するガイドラインも変更しています。これらの方針転換は、次期トランプ政権への配慮があるとの見方もあります。ゲイル氏は、今後は中小企業の支援に注力する意向を示しています。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6781b2efe4b075a3953091c3
「google apple 訴訟」に関する最新情報です。
Appleは、米Googleに対する独禁法訴訟の是正措置段階において、米コロンビア特別区地裁に介入の申し立てを行った。Appleは、Intervenor Defendant(参加被告)として訴訟に加わることを求めており、Googleの弁護側としてではなく、自社の商業的利益を守るために参加する意向を示している。なお、Appleは申し立て文書の中で具体的な是正案には言及していない。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2412/25/news125.html
「アニメ 食堂 追放」に関する最新情報です。
エイベックス・ピクチャーズは、人気作品『追放者食堂へようこそ』のテレビアニメ化を2025年に決定しました。この作品は、2018年に「小説家になろう」で連載が始まり、累計85万部を突破しています。物語は、最強ギルドを追放された料理人デニスと元奴隷の美少女アトリエが「冒険者食堂」を開店し、個性的な冒険者たちと料理を通じて絆を深める異世界グルメファンタジーです。ティザービジュアルも公開され、原作者やキャラクター原案、コミカライズ担当者からの祝賀メッセージやイラストが寄せられ、アニメ化への期待が高まっています。
https://gamebiz.jp/news/397643